民主党の政治決断:思い付きの政治

 民主党政権になって、それまでの官僚支配を打破して、政治家による政治決断を行う、と宣言し、鳩山政権が発足した当初は、官僚と相当ぎくしゃくした。その当時から、私は政治決断というのは、相当な勉強をして取り掛からないと単なる思い付きの政治になるし、下手をすると日本を危険な方向に導く原因にもなると心配していた。

 さて、民主党政権はどのような政治決断を行ったか。

 鳩山首相:米軍普天間飛行場の移設先について「最低でも県外」と決断?し、徳之島に移設しようとしたりして、
        地元を相当混乱させた。この件については、当人が実質、思い付き同然で実現のためのスケジュール
        の検討もしていなかったことを表明している。

 管首相 :「防衛大臣は自衛官ではないんですね」発言に見られるように、この人は憲法を理解しているのか、疑問
        な点がある。一つ目の政治決断は、
        2010年11月「平成の開国TPP協議開始を表明。唐突だった。農業改革が必要なことは認めるとして
        何等そういう議論をすることなく、突然の表明。少なくとも一般国民の私にはそう見えた。市民活動家出身
        の管首相は、市民のことは考えるが、農家や兼業農家のことは考えないのか?意見も聞かないのか?
        2011年7月。原発再開条件としてストレステスト実施を指示。それまで管総理は定期検査が終了した
        原発の運転再開を海江田経済産業相に指示し、海江田経済産業省は玄海原子力発電所の再開を玄海町
        に要請し、玄海町が原発再開容認を発言した直後に管総理が、ストレステストの実施を言い始めたものだ
        から海江田経済産業省の立場は全くなくなった。この経緯を見ると原発再開など単なるその場の思い
       付きで決定されていることが良く分かる

 野田首相:2012年6月8日。関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働について「国民生活を守
       るため、再稼働すべき
だというのが私の判断だ」「今原発を止めてしまっては日本の社会は立ち行か
       ない
」とも述べ、理解を求めた、という。大飯原発については、2号機と3号機の間の地下を南北に通る長さ
        約900mの「F―6破砕帯」が活断層ではないかと騒がれている。現在は地震の活動期に入ったと言われて
        いる時に真っ当な技術論を論ずることなく、日本のあるべき将来を論ずることなく、場当たり的な首相の判断
        に日本の未来をゆだねていいのか。

 今や民主党の政治決断というものは、全て場当たり的な思い付きと現状追認のみで行われていることが分かった。原発の再開は、真に技術的な安全判断をベースに行われるべきである。活断層の真上に立つ可能性の高い大飯原発で東北大震災と同様な事故が発生した場合、日本は本当にどん底に落ちる。そもそも福島原発の事故の実態はまだ解明されていない。津波の被害ばかりが問題視されているが、地震による被害も未解明のままである。操作員が復水器の機能を理解せず、利用しなかった点などは、どう考えればよいのか。要するに運転操作員が原発の基本的な構造と操作法も理解していなかった実態。

 アメリカの原子力規制委員会だったかには、実際に原子力発電所を運転操作できるスタッフが存在すると新聞に書いてあった。日本の場合は、原子力のげの字も知らない公務員が、2〜3年ごとに異動して、何の責任感もなく、現状維持だけを行っていくのである。

 民主党がやるべきであったことは、津波だけでなく、地震による福島原発の事故原因解明と本質的な対策及び管理体制の確立を急ぐことであり、再開を急ぐことではない。また、日本が将来にわたって、脱原発で進むのか、減原発で進むのか、原発依存で行くのか、国民的な議論を行って、将来に備えることではないのか。

 こんな思い付きと場当たり的対応を政治決断というならチャンチャラおかしい。国民を馬鹿にするにもほどがある。

(2012年6月9日 記)

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